コロナ危機と芸術家支援
新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、多くのコンサート
やイベントが中止・延期となった。アート界で活躍している
人々にとって、この事態は生活に関わる問題である。
世界各国で芸術や文化への支援対策が行われているなか、
日本での対策は未だに滞っており、十分とはいえない。
このままでは、日本の芸術・文化は衰退していってしまうだろう。
アート界の現在の状況
新型コロナウイルスの影響で中止・延期となったコンサートや
イベント等の数は、4月上旬で8万件にも上った。
チケット代の払い戻しなどの額は、3月中旬において、
約522億円もの損失と推測されている。
損失を受けたうちの多くはポップス音楽界で、約450億円
もの損失を被った。クラシック音楽界は約34億円、そして、
演劇界は32億円の損失を受けた。
新型コロナウイルスの終息の見通しが立たないなかで、
アーティストはいつになったら再活動できるのであろうか。
今後も、アート業界が受ける損失は膨らむことが予想される。
3月17日には、日本のアート業界の支援を目的にした
「新型コロナウイルスからライブ・エンタテイメントを
守る超党派議員の会」が行われた。
この会合には、衆議院議員の石破茂氏をはじめ、党派を
超えた議員が参加し、コンサートプロモーターズ協会や
日本音楽制作者連盟など多くの音楽団体が集まって議論した。
アート業界は、他業者に比べて政府からいち早く自粛要請を
受けたため、被った損失額が大きい。
アーティストや専門技術者、会場運営者などは中小または
個人による事業が多い。そのため、自粛が長期になった
場合には、事業の経営が難しくなり、将来的に芸術・文化の
継承が途絶えてしまう可能性がある。
また、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、多くの
商店が営業を停止・縮小しているが、アルバイトをしながら
生計を立てている若手アーティストにとってこの状況は
とても厳しいものである。
このままでは、将来を担う若手アーティストは、芸術の道を
諦めざるを得ないかもしれない。
各国のアート業界への支援
もともと日本の文化予算は少なく、主要各国の中でも
最低レベルだ。2020年度の文化庁予算額額は、政府予算の
約0.1%で1067億円である。
日本政府は、今回の新型コロナウイルス危機に対し、
緊急経済対策に文化芸術分野の支援が盛り込んだ。
しかしその内容は、「文化施設再開に向けた感染症対策」
などが主で、アート業界関係者に対しての収入減や休業への
損失補償は考慮されていない。
一方のドイツ政府は、新型コロナウイルス禍のアート業界への
支援策として、補償を含む数十億ユーロ(数千億円)規模の
支援策を決定した。
ドイツの文化相は、「芸術家は必要不可欠であるだけでなく
生命維持に必要なのだ」と宣言しており、芸術家には手厚い
補償が行われる。
お隣の国、韓国政府はというと、新型コロナウイルスが原因で
経済困難に陥った舞台芸術関係者に対し、計30億ウォン
(2億7千万円)規模の支援が行われる。
また民間小劇場には、消毒・防疫用品等の費用として、
約2億2000万ウォン(約1900万円)が支給されるようだ。
日本は、新型コロナウイルスの危機に際して、住民の生活よりも
国の経済を重視した対応である、と批判されている。
政府による自宅待機の要請が出て、多くの人が自由に
外出できないストレスを感じているなかで、芸術は、希望や
新たな発想を私たちに与えてくれる。
現在の状況において、芸術は直接的な危機の解決策とは
ならないが、私たちの日常生活にとって必要不可欠な存在
ではなかろうか。この機会に、日本における「芸術」の
価値が新たに見つめ直されるよう期待したい。
まとめ
新型コロナウイルスの影響で、多くのコンサートやイベントが
延期・中止となった。危機の終息に見通しがつかないなか、
アート業界に携わる人々は、今後の生計に不安を感じている。
日本政府によるアート業界への支援は、主要各国と比較して
不十分な状況だ。このままでは、日本の芸術・文化の
継承が途絶えてしまう可能性がある。