「アビガン」、新型コロナウイルス治療策の第一歩となるか

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「アビガン」、新型コロナウイルス治療策の第一歩となるか

2020年3 月 11 日に世界保健機関(WHO)がパンデミッ
クを表明した新型コロナウイルスは、今だに治療法が確立
されていない。日に日に新型コロナウイルスの感染者が増
える中、有効な治療法の発見・開発が急がれている。

新型コロナウイルスに感染すると、20%が重症肺炎となり、
2%が死に至る。このウイルスへの治療効果が期待される薬
として、富士フイルム富山化学株式会社が開発した「アビガ
ン」が注目されている。

アビガンとは?

「アビガン」(一般名称はファビピラビル)は富士フイルム
ホールディングス(HD)傘下の富士フイルム富山化学が開発
した、抗インフルエンザ治療薬である。

アビガンは、新型コロナウイルスのようなRNAウイルスの複製
を制御し、ウイルスの増殖を抑える。マダニから媒介するウイルス
感染症や、エボラ出血熱の治療にも効果が期待される。

日本では2014年3月に国が管理する薬剤として承認されたが、
動物実験の結果によると、副作用として胎児に奇形が生じる
恐れのある催奇形性のリスクが懸念されている。

中国で行われたアビガンの臨床試験では、催奇形性の問題を除き
目立った副作用はなかった。今後、副作用を考慮しつつ新型コロナ
ウイルスへの治療効果が期待されるであろう。

アビガンの原料は「マロン酸ジエチル」である。このマロン酸ジエ
チルは合成香料や農薬、医薬品などの原料に使われる有機化合物だ。

アビガンの生産を行っているのは、国内で唯一のメーカーである
中堅化学メーカーのデンカだ。マロン酸ジエチルの原料となる
モノクロル酢酸も、デンカの関連会社が生産している。

アビガンの活躍

ドイツ政府は、新型コロナウイルスに対応するため、アビガンを
日本から調達する予定である。ドイツの連邦保健省によれば、
重症者の治療のためにアビガンを使用するようだ。

ドイツ有力紙の「フランクフルター・アルゲマイネ」によると、
ドイツ政府は数百万セットのアビガンの確保を予定しているそうだ。

中国政府の臨床研究の結果によれば、新型コロナウイルスの治療で
効果が認められたようだ。

ドイツでは、国内の新型コロナウイルス感染者の総数は他の
欧州諸国のように多いが、致死率は低くとどまっている。この
ドイツの状況に対し、多くの国が注目している。

ドイツ政府は日本からアビガンの調達を予定しているが、
このように、新型コロナウイルスに関して有効であろう対策を
適切に判断し、実行する積極的な姿勢が、国内の致死率を
低く留まらせているのではなかろうか。

アビガンの効用については、新型コロナウイルス軽症者の場合は
投与後7日以内の回復率が7割を超えたようだ。また、軽症者の
多くは4日間で症状が消えたよう。

中国での臨床試験のみでは、アビガンの効用についてのデータ量は
十分ではない。多くの国から、200万セットのアビガンの備蓄を有す
日本に対し、アビガン調達の要請が来ている。

日本政府は、提供の要請のあった国々に対し、治療に関する臨床データと
引き換えにアビガンを無償提供する予定だ。国内の臨床試験と海外の
データを基に、今後、より正確で詳細な情報を得ることが出来るだろう。

アビガンの生産メーカーデンカは、日本政府から国産原料を用いた
アビガンの供給体制を国内で築きたいとの要請を受け、5月から生産を
再開する。

まとめ

世界中で、新型コロナウイルスの感染者が増加している。
治療法が見つかっていないだけに、人々の不安は増すばかり
だ。

多くの研究者が、既存の治療薬や新たな治療薬に期待を寄せて、
新型コロナウイルスの治療法の、早期発見を目指しているが、
その道のりはまだ厳しそうだ。

このような状況で、日本のメーカーが過去に開発した
「アビガン」は新型コロナウイルスへの治療法として
注目を集めている。

副作用の問題や臨床試験データの不足によって、
その効果はまだ十分とは証明出来てはいないが、もしこの
治療薬が新型コロナウイルス対策への突破口となったとしたら、
日本はもとより、世界中の人々が救われることになる。

今後、アビガンの国内の臨床試験や、海外の研究と協力して
ことで、アビガンの実証性が確立される事が期待される。

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