サツマイモ「べにはるか」が海外へ無断流出
日本の農家が品種改良を重ね、ブランド化されたサツマイモ
「べにはるか」
この品種がなぜか韓国で栽培され流通しているようです。
「べにはるか」は、2010年に農研機構が開発し品種登録
されました。
この「べにはるか」が韓国内で日本国内価格より安く流通して
いるのです。
日本のさつま芋農家は、輸出において悪影響が出ると懸念し
政府に対して有効な対策を取ってほしいと求めています。
どのようにして海外に流出したのか
では、韓国への流出はどのようにして起こったのでしょうか。
品種登録され国内で生産が始まったころ、農業者が視察に
訪れました。
その時に「べにはるか」の種芋を無断で持ち帰ったのでは
ないかと推測されています。
視察団が帰国後、南部の地域で栽培が始まりました。
そして韓国の公共機関である「地方技術センター」が栽培を
奨励し、一気に拡大したと日本側は考えています。
なお、日本側の異議申し立てに対して韓国の「国立種子院」は
明確な回答がなされていないようです。
農水省は、韓国や中国に「べにはるか」の苗が流出している
ことを認識しているようですが、栽培の差し止めや損害賠償を
請求するのは難しくなっています。
新品種保護に関する国際条約では、海外に持ち出された苗を
「べにはるか」だと主張しようにも、4年が時効の出願登録を
しなければ自国の品種と認められないので、今更どうしようも
ないのが現実です。
このようなことは今後もあるでしょう。
農水省は素早い対応、毅然とした態度で臨まないと「やられ放題」
となりますよね。
他にも農産物が海外流出へ流出
日本の農産品は、常に品種改良がおこなわれ、海外でも高級品
として認知されています。
そのため、今まで様々な農産品の苗を無断で自国に持ち帰り
生産されてきました。
過去の例を挙げると(農水省調べ)
「シャインマスカット」は、中国・韓国で栽培が確認され
そこから東南アジアへ輸出もされています。
シャインマスカットといえば、高級品で有名ですよね。
一房1500円以上もしますから。
「不知火」(デコポン)は、韓国で「ハルラポン」アメリカで
「Sumo」という名で栽培・販売されています。
デコポンは、日本側が海外での育成者権を取得していなかった
ことから、海外で生産されても日本に利益が1円も還元
されていないのです。
他にはイチゴやリンゴなども流出を確認しています。
知的財産を守る条約・法律制定が急務
日本の農家とJAや農水省の機関とで、何年もかけて品種改良を
行い、出来上がった高級ブランド農産品が、いとも簡単に
海外へ流出しているのです。
農家の皆さんは怒りと悲しみで、やりきれない思いでしょうね。
どうしてこのようなことが起こってしまうのか?
ざっくり言って、農産品の知的財産権を強化していないのです。
知的財産権を保護するには、まず海外で品種登録をする
ことです。
次には国内で苗を購入する業者に対して、規制を強化する
ことです。
苗を購入した業者が、海外に持ち出すことを認めないように
すればいいのです。
しかしこれを規制するには、法改正が必要なのですね。
この問題で規制を強化するため、審議された法律が「種苗法」
です。
「種苗法」は、今年5月に政府から改正案が提出されました。
この法案が成立すれば、違反した業者に刑事罰を科すことが
できるので、防止効果が期待されたでしょう。
しかし、この法案では「時価増殖」まで制限がかかると考えた
ことから、反対派が多くなり現在でも成立に至っていません。
「時価増殖」に制限をかけるというのは、農家が作物から種を取り
翌年の栽培に使う「時価増殖」に対して、開発者に許諾料を
払わなければならないと考えられていました。
しかし許諾料を支払わなければならないのは、メーカーや研究
機関などが農水省に登録する品種に限られるのです。
以前からある品種には制限の対象外なのですね。
この辺のところが誤解を生じたようです。
現在の状況は、5月に反対した農家が法案を理解し、品種保護を
重要視し始めたので、秋の臨時国会で少し改正した法案で成立する
可能性が出てきたようです。
賛成派・反対派それぞれに意見があると思いますが、放っておくと
海外流出に歯止めがかからないので、双方納得のいく形で
「種苗法」が改正されることを望みます。
知的財産は、国が守らなければ誰も守ることができませんから。